今回は、北海道に自生している野生トウキについて書いてきました。
実際に、自生地を歩いて感じたことは、育つ環境が厳しければ、厳しいほど、トウキは凛として咲いました。
今回、トウキを調査していくうちに、その姿、味、香りと、トウキにすっかり魅せられました。
ホッカイトウキ 厚田
一般に、日本で栽培されるトウキは、背丈が60~90cmと大きめの品種です。これと比べると、今回、出会ったトウキは30〜50cmと小ぶりです。
トウキが自生する場所は、強風や落石などのある厳しい環境条件でしたので、ここでは太く、小さな身姿が適しているのでしょう。
ここにあるものと言えば、狭い石の隙間と水、空気、太陽だけです。
この美しさとは、植物がいま在る環境に適応し、ただ生きる姿だと思います。
深山当帰(ミヤマトウキ)根
植物は、動くことができませんので、生きるために必要な材料全てを自前で作ります。
この生育環境が、厳しければ、厳しいほど、植物は多種・多様な成分を作り出します。これが有効成分とか薬用成分と呼ばれるものです。
環境が植物を作り、植物は、その環境に合わせた成分を作ります。この条件が厳しければ、厳しいほど、植物は様々なものを作り出しますので、これは、私たちが社会で育つ関係と似ています。
東洋医学では、この力を「五気」*「五味」呼びます。これは生薬が何に効いて、どんな特性を持つかを表したものです。
五気
「寒」「涼」「平」「温」「熱」
五味
「辛」「甘」「苦」「酸」「鹹」
今回は、この説明については省きますが、これによると、トウキは「温」「辛」「甘」「苦」を持つ生薬となります。
ミヤマトウキ種子
これは、トウキが身体の中に入ると、血液を増やし、身体を温め、新陳代謝を良くし、血液循環(血液流量・速度)を促進する働きがあることを表しています。
特に、トウキは毛細血管の形や流れを改善する力が強いとされます。 また、自律神経を調整して、副交感神経を優位にし、血管を緩めます。これが冷えや肩こり、生理痛が改善する理由です。
日本海 増毛
心身の健康は「神経」「ホルモン」「免疫」のバランスとされます。トウキは、数ある生薬の中でも、このバランスを調和する働きを持ちます。
ゆえに、漢方薬で最もよく使用される生薬の一つとなります。
トウキ 当帰
和名 : トウキ
学名:Angelica acutilobae radix
科 属 : セリ科 シシウド属
高さ : 60〜90cm
生薬名 : 当帰
使用部位: 根茎部位
漢方薬 : 当帰芍薬散、四物湯、芎帰膠艾湯、温清飲、当帰建中湯、当帰四逆湯、十全大補湯、補中益気湯など
当帰は、補血薬というグループに分類され、血の不足した状態を改善し、身体を温め、血色を良くし、冷え性、めまい、立ちくらみ、生理不順、月経血の不足、痛み、便秘などの症状に総合的に効果があります。
トウキ根
今回は、積丹や襟裳などからトウキや岩石を採取し、さまざまな角度から検証してみました。
蛇紋岩
今回採取した種子から、トウキを育て、そこから細胞水や精油などの有効成分抽出し、薬用酒や薬膳料理、化粧品などを作っていきたたいと思います。また報告いたします。ありがとうございました。
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