DI SER ディセル 香りの旅⑤

JFK空港では、何人かの乗客が税務官に引き止められ、バックやスーツケースを開けられていた。


それを横目にみながら、無事にゲートを通過できた。

もし税関で呼び止められても、言い逃れができるよう、スーツケースの中は、10本程の香水と化粧箱にきちんと梱包された日本酒だけが入っていた。


これも知り合いの酒造メーカーから、事前に新しい瓶やラベルを譲り受け準備したものだった。

空港から街へ出る交通手段としては、バスかタクシーであったが、今回は大切な荷物を持っていたし、慣れない土地でもあったので、タクシーで直接ホテルまで移動することにした。

海外のタクシーには通常のタクシーと乗り合いタクシーというものがある。


乗り合いタクシーとは、方向が同じ7〜8人の客を乗せ、目的地を回りながら、順に、お客を降ろしていくというものだ。


海外では見慣れたスタイルで、何人かで乗り合う分、費用を節約できる。


この時は、節約のために乗り合いタクシーにしたが、これが、後で大きな間違いだったことに気づくことになる。

ニューヨークの市街に入ると、タクシーは、お客をひとり、ひとり目的地で降ろしていく。何人かの客が降りた後、やっと自分の番が回ってきた。


この運転手には、事前にホテルの予約表を見せ、ホテルの名前と場所を伝えておいた。

到着したホテルの前で、荷物を受け取り、受付に行くと予約が入ってないという。


そんなハズはないと、もう一度調べて貰っても、やはり予約がないという。


持っていた予約表を見せると、そこは別のホテルであった。あの運転手は、客を違うホテルで降ろしたのだった。

以前、これと同じことをネパールの山中で経験したことがある。


あの時は、一週間ほどかけてネパールの山をトレッキングする予定だったので、登山道の入り口までのタクシーをお願いした。


山中の詳細な地図を持っていたが、途中、進めば進むほど、手元の地図とは様子が違うことに気づいた。


このドライバーも、違う場所で客を降ろしたのだった。


出発地点が違えば、いくら詳細な地図を持っていても目的地に着けるわけがなく、これが元で、この後、散々な目にあった。

後で分かった事だが、この先の道路は通行料が掛かかるらしく、このドライバーは、その支払いを渋り、約束した場所より手前で客を降ろしたのだ。


これがもとでネパールの山中で危うく遭難しそうになった。海外では、良くある話である。

ホテルの受け付けで、予約したホテルの場所を聞くと、歩いて行けない距離ではないという。


タクシーにも聞いて見たが、そこまでなら歩いて行けと言われる。どうやら微妙な距離らしい。


この後、右も左も分からない、ニューヨークの街を大きなスーツケース二つを持ち、数時間、さまよい歩くことになる。


つづく

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