さて、今回は精油を蒸留して、一つの精油から、いくつかの香料を作る話しをしたいと思います。
初雪 札幌西区
一般に、精油に含まれる成分は300とも500種類とも言われます。
これは分析できる範囲の成分であって、分析ができないものを含めると、精油中には1000や2000種類以上の成分が含まれるかも知れません。
この精油中の特定の成分を集めたり、分離したりすることで、新しい香りが生まれます。
香水の調香
この精油中に含まれる一つ一つの香り成分は、異なる芳香を持ちますが、これらが一つに組み合うことで、全体としてバラやラベンダーなどの香りを表します。
GC/MS 香り成分チャート
上の写真は、GC/MSという機器で精油成分を調べたものです。
*GC/MS
クロマトグラフィー/ マススペクトロメトリー
このチャートには棘のようなものが沢山出ていますが、これはピークと呼ばれ、一つの精油に含まれる成分を個々の香り成分に分けたものです。
*このクロマトグラフィーとは、分けるという意味があります。
横軸が時間、縦軸が強度(濃度)となります。チャートの左から分子量の軽い順に、香り成分が出てきます。
そして、この山が高いほど濃度が高いことを表しますが、濃度が高いからと言って、香りが強いとは限りません。
ナナカマド
一般の香水では、一つ一つの単離香料を組み合わせ香水を作っていきます。
今年の一月にも話しましたが、同じ単離香料でも有機合成で作られたものと、天然から分離されものの二種類があります。
天然香料のみで香水を作る場合には、様々な天然素材から抽出された香料を集めなければなりませんので、これには莫大な労力と時間が必要です。
また、天然香料には価格が高いものが多いため、品質の良いもの得るためには、自分で作るか、自分の足で探すしかありません。
この為には、さまざまな香料を嗅ぎ分けれる経験と香りを抽出する技術が必要となります。
単離香料の製造
この写真は、精油を蒸留しているところで、精油中の成分を沸点により、幾つかの香りに分けています。
次に、その香りに何の成分が含まれているかをGC/MSで調べながら、再度、蒸留を行っていきます。
こうして出来た香料は、他には無いものです。
ベルガモット精油で、BGFという製品を見ますが、これはベルガプテンフリーという意味で、蒸留により光毒性のある成分を除いているものです。
そして、この精油は蒸留によりBGFを除いていますので、無色透明です。
もし、BGFやFCFと書いてあって精油の色が黄色ならば、その製品は疑う必要があります。
この新しい香料作りは、目的の香りを蒸留する条件を見つけなければなりませんので、集中力と根気が必要です。
そして蒸留した香りの中に、何の成分が含まれるのかが分からなければ、次から同じものが作れませんので、蒸留と分析は同時に行っていく必要があります。
バラ畑 紅葉
今年で、香水を作り始めてから25年くらい経ちました。作り始めた当時は、欲しい香料もなかなか買えませんでした。
一つの香料が100万円以上もしたり、注文したものと違うものが届いたり、香料会社に相手にしてもらえ無かったりと、香料には、苦い思い出が随分あります。笑
一つの香水をブランディングするには、調香の技術は元より、香料の知識、原料の調達、香水瓶、パッケージ、パンフレットなどのトータル的なデザイン力と化粧品の製造許可までが必要となります。
分離カラム 20m
このような理由から調香師として才能があっても、自身の香水ブランドを立ち上げるのは、なかなかハードルが高いのが現状です。
最近、そのような調香師の方々から相談を受けますが、是非、諦めずにチャレンジしていってください。いつか機会が訪れます。
今後、世界でも通用するような独自性を持った日本ブランドが出ていくと思います。
ありがとうございました。
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