この二つは、ちょうど右手と左手の関係に似ており、互いに形や重さは似ているが役割や性質が違います。
鏡像異性体 (光学異性体)
片方は香りがあるが、もう片方は香りがなかったり、片方は薬効があるが、もう片方は副作用があったりと「右」と「左」では性格が異なります。
1950〜60年代にかけて「サリドマイド」という薬がありました。
当時、この薬は妊婦さんへの睡眠薬として処方されましたが、この薬も「右」と「左」の二種類の異性体がありました。
そして、その片方には、薬としての効果がありましたが、もう片方には催奇形性があったため、日本では309例のアザラシ状の児が生まれ、サリドマイド児として社会問題となりました。
サリドマイド
C13H10N2O4 分子量258.23g/mol
少し休憩 ティーブレイク
この異性体には、鏡像体異性体だけでなく、いくつかの種類がありますので、はじめに異性体についてお話してから、本題に入りたいと思います。
先ず、異性体には、構造異性体と立体異性体の二つがあります。
◯異性体 ・構造異性体
・立体異性体
そして立体異性体の中には、①幾何異性体と②鏡像異性体(光学異性体)の二つがあります。
※ 以下、光学異性体
立体異性体
①幾何異性体 (シス、トランス)
②光学異性体 [ d,l、(R),(S)]
上に記されている、d, l は それぞれギリシャ語の右: dextro、左: levoを意味する語に由来し、R、S はラテン語の右、左を意味するRectus、Sinisterに由来します。
d,(R) : 右
l, (S) : 左
この中で、薬や香料に関係するものは、光学異性体ですので、今回はこれについて話していきます。
この光学異性体とは、前述したように左手と右手の関係に似ています。左手と右手の形は似ているが、その役割や性質が違うように、薬や香料でもその性質が異なります。
右回りのサリドマイドと、左回りのサリドマイドの判別は、分子式や分子量の情報だけではできません。
右回り
サリドマイド 催眠作用
分子式 C13H10N2O4 , 分子量 258.23g/mol
左回り
サリドマイド 催奇形性作用
分子式 C13H10N2O4 , 分子量 258.23g/mol
上記の情報だけを見ても、右か左かは全く区別がつきませんので、これを区別するために旋光計という機器を使用し、右か左かを判別していきます。
上記のように薬や香料には、この異性体の種類によって、毒性があったり、無かったりしますので、この理解はとても大切なものとなります。次回、詳しく話していきます。
つづく
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