2011年の秋に南フランスにあるグラースへ行き、その翌年の1月にNYの展示会へ参加することが決まった。
これがDI SERの初の海外展だった。初の海外展といっても、まだ国内の何処にも紹介したことはなかったが。
NYでの展示会がトントン拍子に決まり、展示会で使う香水を宿泊先のホテルへ送る予定だったが、出発の10日前に荷物が航空便で送れない事が分かった。香水が危険物だったからだ。
郵便局からはじまり、Fedex、DHL、佐川、ヤマトと問い合わせをしたが、その全てが「香水は送れません」という答えだった。
船便で送っても、最低でも一、二ヶ月の日数がかかるので、これでは展示会には間に合わない。
当時、香水の種類は11種類あったため、サンプル、展示品を含めて4本づつ用意したとしても44本の香水が必要となる。
これは、どう考えても一人がスーツケースで持ち込める量ではなかった。
たとえ、持って入れたとしても税関検査で捕まり香水を没収されてしまえば、その時点で展示会ができなくなる。
NYまで行き、肝心の香水がないのでは笑い話しにもならなかった。
自分の作った香水がどんな評価を受けるかを試しにいくのに、その物がないのではどうしようもない。
手荷物で持ち運ぶにしても、かなりのリスクのある話だったので、この時点で展示会に出れるかどうかも定かではなかった。
そこで、先ず考えたのが、香水の空瓶とカシメ器(香水の蓋を締める専用の機器)のみを航空便で、現地ホテルへ送ることだった。
そして、香水の素となる原液とそれを希釈するエタノールを日本酒瓶に詰め、贈答品のように持ち込み、現地宿泊先のホテルで香水を作るという、とんでもない計画だった。
もし香水瓶が届かなかったら、原液の瓶が割れたら、税関で捕まり没収されたら、カシメ器が壊れたら、この計画のどれ一つ狂っても、香水展には出れないことは分かっていた。
そのために細心の注意と準備を立てた。
日本でカシメ器の分解・組み立てを何度も繰り返し練習し、あらゆるアクシデントを想定した。
宿泊先のホテルに連絡し、荷物を預かって貰う事や荷の到着日について何度も伝えた。途中、香水が溢れたり、割れないよう何重にもパッキングを施した。
そしてホテルに着いてからの、香水製作のシュミレーションを何度も行なった。
こんな甲斐あってか、NYのジョン・F・ケネディ国際空港を何事もなく、無事通過することができた。
つづく
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