DI SER ディセル 香りの旅⑥

どうやら迷子になったようだ。歩けば、歩くほどホテルから離れていた。

iPhoneのGoogle mapで道を調べようにも長時間のフライトのせいで、バッテリーはすでに切れていた。


街中には、携帯を充電をする場所もなく、当時はスターバックスでさえ、まだ充電はできなかった。

残された方法は、道行く人にホテルの場所を聞くのだが、ホテルを知らないのに、まるで知っているかのように答えるのには、ほとほと困った。


自分の居場所が分からない人間が、目的の場所に行くのは至難の技である。


知らない土地の知らない場所に突然降ろされたのだから、しょうがないと言えば、しょうがない。


日本では、なかなか聞かない話しである。

道ゆく人やタクシーの運転手さんに、ホテルの場所を聴きながら、やっとホテルへ着いた。


空港を出てから5時間が経っていた。大きなスーツケース2つを引きずりながらである。

ホテルに着き、受け付けを済まし、届いているはずの荷物について聞くと、そんな荷物は届いていないと言う。

受け付け後ろにある棚を見回すと、漢字が大きく書かかれたダンボールがあったので、「それ」だと指をさすと、「これ」かと言う返事が返ってきた。


あまりの、いい加減な仕事ぶりに閉口したが、文句をいう元気もないほど疲れていた。

どうであれ、無事に全てのものが揃った。なんとか展示会に出れそうである。


これから部屋に上がり、休む間も無く香水を作ることになる。ふと時計を見ると、家を出てから23時間が過ぎていた。


つづく

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