今回、NYに来た理由は二つあった。
一つは、この香水が、海外でどう評価されるかを知りたかったことだ。
日本文化を香水を通じて世界へ発信すると大口を叩いたところで、そのクオリティが製品レベルまで達していなければ、話しにもならない。
日本人が、何をしに来たと言われるくらいなら、はじめから行かない方が良い。日本の評判が下がるだけである。
もう一つは、日本を元気にしたかったことだった。
震災で、復興も進まない中、海外の方に日本を知ってもらう良い機会だっだし、この大変な時期に、香水を売り始めた道化の奴がいると思って貰えれば、日本が少しでも元気になると思った。
ニューヨークの土地で、異なる文化の人たちと触れ合うのは、気を使いはしたが、とても新鮮だった。
こちらへ来て、驚いたことが、来場する男性のほとんどがゲ〇だったことだ。出展者、来場者を含めてである。
両隣りのブースの男性も、前の男性もゲ〇だった。毎朝、手を小刻みに振って挨拶してくれた。
この建物の中で、〇イで無かった男と言えば、自分とセキュリティーくらいだったのではないかと思う。
ニューヨークに住む男性の4割がゲ〇だといわれる。計算からいうと、街をすれ違う男の二人に一人はゲ〇ということになる。
街中を歩いていても、この人普通、次はゲ〇、この人普通、次は〇イと、そんな風にニューヨークの街を歩いていた。
香水の展示会では、これが濃縮され、さらに密度を増す。おそらく、こういった方は感性が高く、芸術的な感覚を持っているのだと思う。
新しい場所では、色々な発見がある。これは実際に行き、肌で感じてみないと分からない。
雑誌やメディアから取材を受け、取り引きの話しも沢山いただいたが、こちらの準備ができていなかった。
そもそも送れないものを、NYまで売りにいったのだ。
これに関しては、今でも多くの方に失礼なことをしたと思っている。
彼方は、真剣にビジネスで来ていたのに、此方は、ただ様子を見に行っただけだったからだ。申し訳なかった。
香りを楽しんでいる人の顔を見て、来て良かったと思えた。少しだが、周りとの距離が縮まったようだ。
自分の世界だけに在ったものを、外へ出して、喜んで貰えたことが嬉しかった。
この2ヶ月後に、ドイツ・デュッセルドルフで開催される香水展へ行くことになる。次の目的地はヨーロッパである。
第一章終り
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