錬金術 スピリッツ③

今回はスピリッツと錬金術、教会との関係を書いてきました。米麹について書き始めた時は、ここまで話しが広がるとは思っていませんでした。

麹から始まり米麹→日本酒→蒸留酒→ハーブ→スピリッツ→錬金術師→教会と、ずいぶんと長い話しとなりました。

 Wikipedia 

『アラビア人錬金術師 ゲーベル』

 

当時の錬金術師と教会との関係は、迫害されたり、お金のやり取りがあったり、とても複雑だったようです。これに加え薬剤師や医師、商人、貴族などのパトロンも関わってきますので、この関係はさらに複雑になります。

作られた薬が、効けば効いたで、捕らえられ投獄されたでしょうし、殺される場面も多くあったと思います。どの時代も、各々の利害関係が絡み合った中、医学や薬学は進歩してきたようです。

当時の医薬界も、現代の医薬界もその構図は似たもので、製薬メーカー、大学、病院、医師、薬剤師、宗教、政治、行政..... 

数千年の間、医学、薬学の姿形は変化しても、このシステムはあまり変ってないようです。

 Wikipedia  『アル・ラーズィ』


○香りの大切さ

スピリッツというと、ヨーロッパではアルコール濃度が40%以上ものを指します。この中でもジン、テキーラ、ウォッカ、ラムは、四大スピリッツと呼ばれます。

このスピリッツには、精製されたアルコール、水、そして香りが含まれています。この香りには、発酵の途中で微生物が作り出した香りとジュニパーやレモン、トウキ、ニガヨモギなどのハーブの香りが含まれます。

薬を処方していますと、香りがあるものと、ないものでは、その効果が違うことに気づきます。

古くなった薬用植物には、不揮発性の成分は残っていますが、揮発成分である香りは、飛んでしまっていて、あまり残っていません。

良いものを作る為には、収穫の時期から、収穫時間、収穫方法、抽出方法、保存までをタイミング良く行なう必要があります。

以前、台湾の漢方製薬メーカーにお伺いした際にも、品質の良い漢方薬を作るためには、どういう点に気をつけるのかと聞いたことがあります。

その時の製薬の担当者は、生薬の香りをどう残すかが大切だと言われていました。

この香りこそが有効成分で、昔から伝えられてきた治療にかかせない材料ではないでしょうか。

もし、薬効のある植物とない植物との違いは何ですか?と聞かれるならば、それは、その植物に香りがどのくらい残っているかと答えると思います。

精油にしても細胞水やスピリッツにしても、植物を蒸留することより得られ、植物の「精」である香りを集めたものです。

昔の人が、これらを「生命の水」とか「エリクサー」と呼んだことがよく分かります。

スピリッツは、ヨーロッパで薬として使われてきた経緯があります。日本でも、日本酒は「百薬の長」として親しまれてきた歴史があります。

それは、これらの「香り」に何かの秘密が隠されているようです。

つづく

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